8月15日

西ドイツのフッセンを出て、バスでスイスのルツェルンへ行った。ところが着いたその日は何かの祝日だったらしく、ほとんどの商店、銀行が閉まっていた。夜は同じツアーの友達10人くらいで11時過ぎに駅の自動販売機まで行った。すると変なおじさんが近寄ってきて、私たちに話し掛けてきた。彼は奇妙な絵が書かれた本を持っていて、自動販売機に向かって話し掛けていた。ほかにもけんかして階段からころげ落ちてくる人がいたり、ゲイのショーのチラシが道端にあったり、ちょっとしたスリルが味わえた。ホテルへ戻り、一部屋に集まってトランプをしたり怪談をしたりしていたので、結局寝たのは朝の4時過ぎで起きたのが7時。ほとんど眠らなかった。スイスの二日目は一日自由行動だったので友達4人でリギ山まで行った。まずはルツェルン湖を船で渡り、それから世界一急だという登山列車に乗ってリギ山の頂上まで上って行った。

以前、スイスの山には核シェルターとかミサイルが隠してある、とどこかで聞いたことがあったので、どこにあるのかな、と目をこらして眺めたが分からなかった。

標高2000メートルほどのリギ山の頂上からは遠くアルプス山脈が見渡せた。前日ほとんど寝ていなかったせいか、帰りの登山列車の中では熟睡してしまった。しかし、どうやら山の頂上を境にしてルツェルンとは正反対の街へおりてきてしまっていたらしい。一緒にいた友達は焦ってぶつぶつ言っていたが、とりあえずまた反対方向へ行く登山電車に乗ってルツェルンを目指した。その日は夕方の列車でイタリアへ行くことになっていたので走ってホテルに戻り、ぎりぎりセーフでツアーバスに間に合った。

ローマへ行く夜行列車では泥棒がこわかったのでほとんど眠れなかった。イタリアへ着くと、イギリスでいつも耳にしていた懐かしいイタリア語が聞こえてきた。ローマは暑い。つい数日前までドイツでセーターを着ていたのがうそのようだ。

午前中はツアーバスでバチカン市国のサンピエトロ寺院、コロセウムを見学したのだが、午後の自由時間にはあまりの暑さに行動する気になれず、ホテルで眠ってしまった。夕方になってやっと涼しくなったのでショッピングをした。ベネトンでスカートを買った。夕食に部屋で日本から持ってきていたインスタントおにぎりを食べた。ヨーロッパへ着てからはじめての日本食だった。この日も寝る前に友達の部屋に集まって怪談をしていたら、変な物音がしたのでこわくなってそのまま布団にもぐって気付くと寝ていた。

８月１８日

ポンペイ遺跡を見に行った。二千年も昔によくもこんな暮らしができていたものだと感心してしまった。水道はあるし、公衆浴場もある。それにバーのようなものも。やはり人は昔からお酒が好きだったんだなあ。

ナポリでは名物の洗濯物をバスの窓から眺めた。家なんてぼろぼろで臭そうだけど、生活感があって西ドイツのローテンブルクとは正反対だった。

８月１９日

午前中、ホテルのそばのお店で靴を買った。靴といえばイタリア、と聞いていたのでどんなものかと思って買ってみた。約８０００円でワインレッドのエナメル靴を見つけた。底も皮で紳士物ぽいところが気に入った。

午後、飛行機でアテネへ行った。オリンピック航空の飛行機は何回も揺れたのでちょっとこわかった。アテネに近づき、飛行機の窓から見えたギリシャの風景は憧れていた風景そのものだった。夜は添乗員さんのサービスでリカペトスの丘までタクシーに乗っていった。しかしそのタクシーというのが悲惨だった。一台に７人も詰め込まれた挙句、最初は2000ドラクマの約束で乗ったのに、後になってから「５人乗りなのに７人乗ったから3000ドラクマだ。」などと言ってきた。でも「話が違う」といって結局2500ドラクマ払ってしまった。7人乗りのタクシーなんて生まれて初めてだったので悲惨だったけど面白かった。

リカペトスの丘からのアテネ市内の眺めは本当にきれいだった。夕食もそこで食べた。ギリシャのレストランでは日本と同じように水がタダで出てきた。写真を撮っていたら日本人女性2人が近寄ってきて、スイスのガイドブックを持っていたらゆずってほしいといってきた。ホテルにあるのでそれでもよければ、と後でまた会う約束をした。

丘からのケーブルカーでイタリア語を話している人たちがいたので、「イタリア人ですか？」と聞くとうれしそうに"Si"と答えてくれた。そして「イタリアに言った事がある」と私が言うと大変喜んでくれた。最後に"Ciao"と言って別れた。

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